M&Aとは何か、その基本から中小企業オーナーが知っておくべきポイントまで徹底解説。2025年最新の動向を踏まえた初心者向けガイド。
M&Aとは?基本的な意味と種類
M&Aという言葉を耳にする機会が増えてきました。テレビや新聞でも大企業の合併や買収のニュースが取り上げられることが多くなっています。しかし、「M&Aって具体的に何なのか?」「自分の会社にも関係あるのか?」と疑問に思われている経営者の方も多いのではないでしょうか。
M&Aとは「Mergers and Acquisitions(マージャーズ・アンド・アクイジションズ)」の略で、日本語では「合併と買収」を意味します。簡単に言えば、企業と企業が一緒になったり、ある企業が別の企業を買い取ったりする取引のことです。

M&Aの主な種類
M&Aには様々な形態がありますが、主に以下の種類に分けられます。
1. 合併(Merger)
合併とは、2つ以上の会社が1つの会社になることです。法的には対等合併と吸収合併があります。対等合併は両社が解散して新会社を設立するもの、吸収合併は一方の会社が存続し、もう一方の会社が解散するものです。
2. 買収(Acquisition)
買収は、ある会社が別の会社の株式や事業を取得することです。株式を取得して経営権を握る「株式取得」と、事業そのものを取得する「事業譲渡」があります。
3. 事業譲渡(Business Transfer)
会社全体ではなく、特定の事業部門や資産のみを譲渡する方法です。譲渡側は不採算事業を切り離したり、経営資源を集中させたりする目的で行います。
4. 株式交換・株式移転
株式交換は、ある会社が別の会社の株式を100%取得して完全子会社化する方法です。株式移転は、複数の会社が共同で持株会社を設立し、その傘下に入る方法です。
なぜ今、中小企業のM&Aが注目されているのか
2025年現在、中小企業のM&Aが特に注目されている背景には、いくつかの社会的要因があります。
経営者の高齢化と後継者不足
日本の中小企業経営者の平均年齢は年々上昇しており、多くの経営者が引退の時期を迎えています。しかし、子どもが事業を継ぎたがらなかったり、適切な後継者が見つからなかったりする「後継者問題」が深刻化しています。中小企業庁の調査によれば、今後10年間で約30万社の中小企業が後継者不足により廃業の危機に直面すると言われています。

M&Aは、このような状況で会社を存続させる有効な選択肢となっています。自社の従業員の雇用を守りながら、築き上げてきた事業を引き継いでもらえるからです。
事業拡大・シナジー効果の追求
成長を目指す企業にとって、M&Aは新規事業への参入や市場シェア拡大の手段として有効です。新しく事業を立ち上げるよりも、すでに実績のある企業を買収する方が、時間とリスクを節約できることがあります。
また、同業種や関連業種の企業と統合することで、「シナジー効果」(相乗効果)が生まれることも期待できます。例えば、販路の共有、技術の融合、管理コストの削減などが可能になります。
政府の支援策の充実
政府も中小企業のM&Aを促進するための支援策を拡充しています。2018年に「事業承継税制」が大幅に拡充され、2023年には「中小M&A支援機関登録制度」が創設されるなど、M&Aに関する環境整備が進んでいます。2025年現在も、さらなる支援策の拡充が進められています。
中小企業M&Aの基本的な流れ
M&Aは複雑なプロセスですが、基本的な流れを理解しておくことで、心構えができます。一般的なM&Aの流れは以下のとおりです。
1. 準備段階
M&Aを検討する前に、自社の現状分析と目的の明確化が必要です。売り手側であれば、なぜM&Aを選択するのか、どのような相手に事業を引き継ぎたいのかを考えます。買い手側であれば、どのような企業を探しているのか、M&A後にどのようなシナジーを期待するのかを明確にします。
また、自社の財務状況や強み・弱みを客観的に分析し、企業価値を把握しておくことも重要です。
2. 相手探し(マッチング)
適切なM&A相手を見つけるためには、以下の方法があります。
– M&A仲介会社・アドバイザリー会社に依頼する
– 金融機関に相談する
– 取引先や知人の紹介を受ける
– M&Aプラットフォームを利用する
特に初めてM&Aを検討する中小企業の場合は、専門家のサポートを受けることをお勧めします。
3. 基本合意
相手が見つかったら、お互いの意向を確認し、基本的な条件について合意します。この段階で「基本合意書」や「秘密保持契約(NDA)」を締結することが一般的です。
4. デューデリジェンス(詳細調査)
買い手側が売り手企業の詳細な調査を行います。財務状況、法務関係、人事、IT環境、知的財産など、様々な側面から調査し、リスクがないかを確認します。この調査結果に基づいて、最終的な買収価格や条件が調整されることもあります。
5. 最終契約
デューデリジェンスの結果に問題がなければ、最終契約を締結します。M&Aの形態によって「合併契約書」「株式譲渡契約書」「事業譲渡契約書」などが作成されます。
6. クロージング(決済・引き渡し)
契約に基づいて、株式や事業の譲渡、対価の支払いなどが行われます。必要な許認可の取得や登記手続きも行います。
7. PMI(Post Merger Integration:統合作業)
M&A成立後、両社の経営統合を進めます。組織体制の見直し、業務プロセスの統合、企業文化の融合など、様々な課題に取り組みます。この統合作業の成否がM&Aの成功を大きく左右します。
中小企業M&Aのメリットとデメリット
M&Aには様々なメリットがありますが、同時にリスクやデメリットも存在します。自社の状況に合わせて、慎重に検討することが大切です。
売り手側のメリット
1. 会社・事業の存続
後継者がいない場合でも、M&Aによって会社や事業を存続させることができます。長年築き上げてきたブランドや技術、従業員の雇用を守ることができます。
2. 経営者の引退資金の確保
会社売却の対価として得られる資金は、経営者の老後の生活資金や次の事業への投資資金になります。
3. 従業員の雇用維持
廃業すれば従業員は職を失いますが、M&Aであれば雇用を維持できる可能性が高まります。
4. 事業の成長機会
より大きな企業グループに入ることで、単独では難しかった事業拡大や新規投資が可能になることがあります。
売り手側のデメリット・リスク
1. 経営権の喪失
会社を売却すれば、当然ながら経営権は買い手に移ります。長年自分で決断してきた経営者にとって、これは大きな変化です。
2. 企業文化や経営方針の変化
買い手によって経営方針が変わり、これまでの企業文化や価値観が失われる可能性があります。
3. 従業員の不安や反発
M&Aによって従業員が不安を感じたり、新しい経営体制に反発したりすることがあります。
買い手側のメリット
1. 時間とコストの節約
新規事業を一から立ち上げるよりも、既存の事業を買収する方が早く市場参入できます。
2. 人材・技術・ノウハウの獲得
優秀な人材や独自の技術、ノウハウを一度に獲得できます。特に人材確保が難しい現在、これは大きなメリットです。
3. 顧客基盤・販路の拡大
売り手企業の顧客や販売チャネルを引き継ぐことで、すぐに事業規模を拡大できます。
4. シナジー効果の創出
既存事業と買収した事業を組み合わせることで、新たな価値や効率化が生まれる可能性があります。
買い手側のデメリット・リスク
1. 想定外の負債やリスクの発見
デューデリジェンスで見落としたリスクや負債が後から発覚するケースがあります。
2. 統合の難しさ
異なる企業文化や業務プロセスの統合は想像以上に難しく、時間とコストがかかることがあります。
3. 期待したシナジーが出ない
事前に想定していたシナジー効果が実現しないリスクがあります。
中小企業M&Aの成功のポイント

M&Aを成功させるためには、以下のポイントに注意することが重要です。
1. 明確な目的意識を持つ
なぜM&Aを行うのか、その目的を明確にしましょう。単に「後継者がいないから」「規模を拡大したいから」という漠然とした理由ではなく、具体的にどのような未来を描いているのかを考えることが大切です。
2. 適切な相手選び
相性の良いM&A相手を見つけることが成功の鍵です。業種や規模だけでなく、企業理念や価値観の共通点も重要な要素です。特に中小企業の場合、経営者同士の人間関係が重要になることが多いです。
3. 適正な企業価値評価
売り手も買い手も、対象企業の価値を適正に評価することが重要です。過大評価も過小評価も、後々のトラブルの原因になります。専門家の支援を受けながら、客観的な評価を行いましょう。
4. 専門家の活用
M&Aは専門的な知識と経験が必要な複雑なプロセスです。M&A仲介会社、会計士、弁護士、税理士など、専門家のサポートを受けることで、スムーズに進めることができます。
5. 従業員とのコミュニケーション
M&Aが決まったら、従業員に対して丁寧に説明し、不安を取り除くことが重要です。情報が不足すると噂や憶測が広がり、優秀な人材が流出する原因になります。
6. 統合計画の策定と実行
M&A成立後の統合(PMI)は、成功の鍵を握る重要なプロセスです。組織、人事、業務、システムなど、様々な側面での統合計画を事前に策定し、計画的に実行しましょう。
中小企業M&Aの最新動向(2025年)
2025年現在、中小企業M&Aの世界では以下のような動向が見られます。
M&A市場の拡大と多様化
中小企業のM&A市場は年々拡大しており、業種や地域も多様化しています。特に、IT・デジタル関連企業、ヘルスケア、環境・エネルギー関連企業のM&Aが活発化しています。
M&Aプラットフォームの普及
オンラインでM&A相手を探せるプラットフォームサービスが普及し、より手軽にM&Aを検討できるようになっています。これにより、地域や業界を超えたマッチングが増えています。(Batonz、TRANBIなど)
経営者保証解除の進展
経営者保証(経営者個人が会社の借入金を保証すること)がM&Aの障壁になっていましたが、「経営者保証に関するガイドライン」の浸透により、保証解除が進んでいます。これにより、M&Aがより円滑に進むようになっています。
デジタル技術を活用したM&Aプロセス
デューデリジェンスやPMIにおいて、データ分析やAIを活用する動きが広がっています。これにより、より効率的かつ精度の高いM&Aが可能になっています。
まとめ:中小企業経営者がM&Aを検討すべきタイミング
M&Aは、中小企業にとって重要な経営戦略の一つです。特に以下のような状況にある経営者は、M&Aを検討する価値があるでしょう。
– 後継者が見つからず、事業承継に悩んでいる
– 事業拡大や新規事業参入を検討している
– 業界再編の波が来ており、単独での生き残りが厳しい
– 経営資源(人材・資金・技術など)の不足に悩んでいる
– 株主や金融機関からの要請がある
M&Aは決して大企業だけのものではありません。適切な準備と専門家のサポートがあれば、中小企業でも成功させることができます。自社の将来を見据えて、選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
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